母音の無声化、本当に起こる?
2020年6月24日
Q. 「なし」という音について、「無し」の意味で発音する時は無声子音の後かつ語末で使われることが多いため無声化しますが、「梨」の意味で発音する時は有声音であるように感じます。「梨」が文中で使われることが多いため無声化しないのかなとも考えましたが、単独で発音する時も有声音で終わると思います。これは、個人の感覚の違いなのでしょうか。それとも、同じ発音でも意味によって無声化したりしなかったりがあるのでしょうか?
A. お察しのとおり、「梨」においては語末の母音が(無声化の条件は満たしているにもかかわらず)無声化せずに実現するのが一般的です。これにはアクセントが深く関わっています。
末尾の母音が無声化する=2拍目においてほぼ子音しか聞こえない状態になると、1拍目・2拍目どちらが高いのか判然としなくなるという問題が生じることになります。そのため、1拍目が高く2拍目が低い場合(e.g.「無し」)では無声化が生じるのに対し、1拍目が低く2拍目が高い場合はその2拍目の高さを明示的にするために無声化が起こらないという例外措置が講じられることになるわけです。