動詞の項はどう数える?
2020年11月30日 2020年12月28日
Q. 個々の動詞について、項の数はどのように把握すればいいでしょうか。また、項のあり方は他の言語においても同様なのでしょうか。
A. たとえば「私は待った」「太郎は鍵を手渡した」のような文は、必要不可欠な情報が欠けており、文脈が整っていない限りは不自然で不完全な文と見なされます。これはすなわち、「待つ」は「花子を」のような対象を、「手渡す」は「鍵を」のような直接対象に加えて「花子に」のような相手(間接対象)を、それぞれ義務的に要求する=項として取るという事実を示しています。このように、項はその動詞を使った文から不可欠ではない要素(「午後3時に」「食堂で」など)をそぎ落としていった結果、それだけはないと出来事として成立しないようなメンバーを絞り込んでいく中で明らかになるものです。
日本語のある動詞が他言語のある動詞と同じような意味を表す場合、取られる項の数は原則として同じになると考えることができます。たとえば「手渡す」は「鍵を」・「太郎に」の2項を取る一方、英語の”pass”は”a key”・”to John”の2項を取るといった例を挙げることができます。