離れた方言に似た言葉があるって本当?

Q. 方言は日本の中心(京都)から外側へと広がっていったため、たとえば富山と高知の言葉は似ているといったことがあるようですが、実際はどうなのでしょうか。また、こうした傾向はヨーロッパの諸言語にも同様に認められるのでしょうか。

A. 江戸時代中頃まで日本の文化の中心であった近畿地方から見て、古い語彙ほど離れた地域に、新しい語彙ほど近い地域に同心円状に分布しているという説(方言周圏論)は、少なからず当てはまる事例が認められます。ただし、沖縄は日本とは別の国家(琉球王国)であった時期が長く、また北海道は近代以降になって全国から集まった入植者が独自の方言を形成していったという歴史的経緯から、いずれの地域もこうした分布に当てはまるものではありません(周圏論が意味を持つのは、東北から九州の範囲に限られます)。

国境をまたぎ、人が簡単に行き来できないような規模にまで広がっていくと、元の言語との断絶が大きくなり(すなわち新しい語彙などが流入してくることが少なくなり)、それだけ個々の言語が独自の変化を遂げる部分が多くなると思われます。たとえば印欧祖語からゲルマン祖語への(p→fといった)変化がヨーロッパ全体の中ではごく局所的にしか起こらなかったように、言語の姿が大きく変わるようなことはしばしば偶発的で不規則的なものになります。

satoyou
  • satoyou
  • 大学教員。主に日本語学系の授業を担当しています。

コメントする