日本語以外の敬語って?
Q. 英語など他言語にも敬語の概念はあるのでしょうか。あるとしたら相対敬語・絶対敬語のどちらに区分されるのでしょうか。
一般に、他人にまつわる物事は直接的に言及するほど不躾であり、間接的な言及ほど配慮の行き届いた表現と見なされる傾向にあります。たとえば目上の人物が所有しているものについて「○○をお持ちだ」と言うよりも「○○がおありだ」とした方が(所有するという行為に直接言及しない分)敬意が表れやすくなります。英語の依頼表現においては助動詞の過去形(たとえばcanでなくcould、willでなくwould)を用いることにより、話し相手に対する敬意を表することができるということがしばしば問題になりますが、これは現在の行為を過去のこととして語ることによって距離を置き、その分直接的な印象を和らげるという発想に基づいています(他に、「もし窓が開いたら嬉しい」といったように、より遠回しな表現を用いることでさらに敬意のレベルを上げることもなされる場合があります)。
なお、上述の英語の例は専ら二人称の敬語であって、その場にいない第三者を巻き込む性質のものではない(「私が自社に戻る」「自分の上司に報告する」といった場合であっても、「自社」「上司」に対する待遇に変化が生じることはない)ということがいえます。したがって、英語の敬語については絶対・相対の区別自体が認められないということになります。
敬語の発達している言語で言うと、他にはヒンディー語なども絶対敬語を持つようです。その他、欧米の多くの言語には英語と同様に待遇的な(話し相手に配慮するような)表現以外の敬語的要素が希薄であること、ペルシャ語などは日本語に近い(尊敬・謙譲などの使い分けが豊富な)敬語体系を有しつつおおむね絶対敬語であることなどが知られています。