日本語は中国語族ではないの?
2020年5月4日
Q. 日本語は中国語の漢字やそれに由来するひらがな・カタカナといった文字を用いていますが、それでも孤立した言語と呼ぶことに問題はないのでしょうか?
A. 日本語の文字は、確かに中国語なくしては成立し得なかったものではあります。しかし、それは日本語という言語そのものが中国語から形作られたということとはまったく異なります。中国語に由来する単語(漢語:茶・本・愛・徳など)は数多く存在していても、たとえば助詞や助動詞を多数組み合わせて文を作る(膠着語の)システムは日本語に広く認められる一方、中国語にはまったく認められません。何より、日常に深く根ざすような語彙も発音上、ほぼ別物です。すなわち、日本語と中国語は元来、言語としては各々まったく別に成立したものと考えて然るべきだということになります。いったん成立した上で、中国語からどれだけ多くの単語を輸入したとしても、日本語が中国語から分かれて生まれた言語であるということにはならないわけです。日本語と同じく、朝鮮語や第二次大戦直後までのベトナム語などでも漢字は用いられており、これらの言語も中国語の影響は強く受けていますが、やはり中国語と同系統とはいえません。
これと同様の関係は、たとえばアラビア語とペルシャ語などの間にも認められます。前者は後者に語彙レベルで大きな影響を与え、両者は文字も共通しているものの、言語それ自体は互いに別系統であることが明らかになっています。また逆に、ヒンディー語とウルドゥー語のようにほぼ同じ言語であっても、各々異なる文字を用いる例(前者はサンスクリットと同様のデーヴァナーガリー、後者はアラビア系文字。主として宗教的な理由による)もあります。